産経新聞 令和5年3月21日配信
負担大きい家族、社会の理解必要
あけみちゃん基金は、今年度から国内で心臓移植を待機している子供やその家族に対する財政支援を実施しており、これまでに56人の子供とその家族から申請を受けた。弱った心臓を助ける補助人工心臓を装着しながら、病院で臓器提供者(ドナー)が現れるのを待ち続ける子供たち。しかし、移植の機会は極めて限られ、なかなか移植にたどり着けない現状がある。
日本臓器移植ネットワークによると、昨年1年間に国内で実施された心臓移植は79件。本人の意思が不明でも家族の承諾があれば脳死下臓器提供が可能になった改正臓器移植法施行以降で最も多かった令和元年(84件)に次ぐ数字になった。しかし、20歳未満だけでみると、10代は2件、10歳未満が7件の計9件で、元年(17件)の約半分でしかない。今年は3月15日時点で10代への移植が2件あったのみだ。
一方、今年1月末時点で国内で心臓移植を希望している10代の患者は56人で、10歳未満は46人。移植希望者数とドナー数は全く釣り合いが取れていない状況が続いている。
ドナーの少なさは、そのまま移植までの待機が長期化することを意味する。
移植医らによる日本心臓移植研究会のまとめでは、昨年9月末までに小児用補助人工心臓「エクスコア」を装着した103人のうち、42人は心臓移植にたどり着いたが、10人は移植にたどり着けず亡くなった。エクスコアの装着期間は年々延びており、昨年9月末時点の平均は428日。最長で1240日に及んでいた。基金申請者の中にも2年、3年と待機を続けている子供が複数いる。
さらに、長期の待機は患者本人のみならず、家族にも多大な影響を及ぼしている。入院中の子供には親が付き添うことになるが、病院が自宅から離れた場所にあったり、ほかにきょうだいがいたりする場合は、1つの家族が2カ所に分かれる〝二重生活〟を強いられることになる。
どうしたら、病と闘う子供たちの未来が開かれるのか。求められるのは、移植医療に対する社会の理解だ。あけみちゃん基金は、今後もさまざまな機会を通じて、心臓移植を待つ子供たちの現状を伝えていく。