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進まぬ国内での心臓提供…

2024.2.27

進まぬ国内での心臓提供…4年入院して待機の末、移植成功 学校に復帰した13歳少年の夢は

産経新聞 令和6年2月26日配信

重い心臓病を患い、他者からの臓器提供がなければ命をつなげない子供たちがいる。臓器移植法の施行から昨秋で26年が経過し、提供件数は千件を超えたものの、日本での臓器移植件数は海外と比べ、格段に少なく、移植を待つ日々が長期間に及ぶことも少なくない。国内で約4年にわたり待機した家族は「国内で移植を待つ人がいることを知ってほしい」と訴えている。

心臓移植をした中学1年生の中園瑛心さん=京都府(柿平博文撮影)

「ただいまー。あぁ、疲れたぁ」。京都府の中学1年生、中園瑛心さん(13)は学校から自宅に着いて玄関で靴を脱ぐと、はうように部屋に転がり込んだ。

小学3年生のとき、心筋が薄くなり収縮力が落ちて心不全症状が起きる「拡張型心筋症」と診断され、心臓移植が必要になった。入院して約4年間、移植を待ち続ける間に筋力が落ち、歩き方はぎこちない。急な坂の多い約2キロの通学路を片道50分近くかけて通う。「動くのをおっくうがる瑛心にとって登下校も良いリハビリ」と母のみどりさん(46)は笑った。

もともと活発で外を駆け回る子供だったが、倦怠(けんたい)感からか昼寝が増え、「腹水でビール腹のようにおなかが膨れ上がって」(みどりさん)食欲も落ちた。無理に食べると、戻してしまった。病院で検査を受けると、医師から「重度の心不全でほぼ心臓が動いていない」と言われ、衝撃を受けた。

大阪府吹田市の国立循環器病研究センター(国循)へと救急搬送され、小児用補助人工心臓「EXCOR(エクスコア)」を装着して移植を待つことに。瑛心さんの姉妹が幼いことなどから、海外での移植は現実的ではないと判断、国内での提供にかけた。だが待機期間中、何度も体調が悪化。みどりさんは「生きて帰してやれないのではと覚悟した」と振り返る。

「入院1000日」の飾りつけを前に写真に収まる中園瑛心さん。長引く待期期間を明るく乗り切った(家族提供)

入院中、身長はほとんど伸びず退院時は129センチ。同級生と並ぶと小柄で、中学の制服は特注品だ。だが移植後、数カ月で5センチ身長が伸び、みどりさんは「ドナーさんから譲り受けた健康な心臓の生命力の強さなのかな」と驚く。
念願の学校生活は、少人数の院内学級とは違う集団授業。学習の進度に戸惑いもあるが、瑛心さんは「毎日がめっちゃ楽しい。どの部活に入ろうか迷う」と笑う。

幼い頃から流れる雲が気になっていたといい、「将来の夢は気象予報士」。入院中、あこがれだった気象予報士、蓬莱大介さんとオンラインで交流する機会があり、直近の目標は「蓬莱さんに直接会って退院報告をすること」だ。
「大切な命をもらったから、毎日をちゃんと生きたい」と話す瑛心さん。みどりさんは「移植がなければ描けなかった未来。入院中には遠く感じていた目標を、1つずつかなえられる日々がありがたい」と提供者への感謝を語った。

臓器提供の意思表示わずか1割
海外と比べると国内での心臓移植件数は少ないものの、少しずつ増えている。平成22年の改正臓器移植法施行で15歳未満の小児からの臓器提供が可能になり、日本臓器移植ネットワークによると令和元年までの小児からの心臓移植件数は23件。当初は瑛心さんの移植も、もう少し早く実現するとみられていた。

ところが、新型コロナウイルス禍の中、提供数が激減。提供される心臓と、瑛心さんの体格や血液型がなかなか合わず、待機は4年もの長期に及んだ。瑛心さんの主治医で国循の坂口平馬(へいま)医師は「海外では補助人工心臓の装着期間は数カ月程度で、何年も装着したままの状態が続くのは日本だけだろう」と話す。

同ネットワークによると、2022年の人口100万人あたりの臓器提供数は米国で44・50例なのに対し、日本はわずか0・88例。内閣府の調査で「臓器提供をする・しないという意思表示をすでにしている」もしくは「意思を表示したことを家族や親しい人と話した」という人はわずか1割と少ないことも、国内の移植が進まない要因の一つだ。

みどりさんは「臓器を提供する意思も、しない意思もどちらも正しい。まずその意思を示してほしい」と訴えた。

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