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九州ではすでに実現、連携が救った小さな命も…子供の心臓外科手術の拠点病院化

2024.4.11

産経新聞 令和6年4月10日配信

難易度の高い小児心臓外科手術を拠点病院で集中して行うことで成功率を高め、専門外科医の経験も積みやすくする日本小児循環器学会など3学会の集約化方針。拠点病院の決定やすみわけの調整はこれからで、各地で難航することも予想される。そんな中、九州ではすでに病院間の連携のもと、福岡市立こども病院が実質的な拠点病院として機能している。

 

「それではカンファレンスを始めます」

2月下旬、ビデオ会議システムで福岡市立こども病院と宮崎大医学部付属病院をつないで行われたオンライン会議。画面上には、宮崎から福岡へ搬送を予定する小児患者の心臓の3次元CT画像が映し出された。参加した医師らは、病態や搬送時の注意点などを話し合った。

福岡市立こども病院と九州各県の病院を結んだオンライン会議は定期的に行われており、人事交流も盛んだ。この日の会議に参加した宮崎大医学部付属病院の医師の1人は、以前福岡市立こども病院で勤務していた。

福岡市立こども病院では難易度の高い手術を担うため、九州各県の連携病院とオンラインカンファレンスを行っている(同病院提供)

 

背景に医師不足 心臓外科全体の課題

福岡市立こども病院は昭和55年の開院以来、九州全域で手術が困難な先天性心疾患の手術を一手に担ってきた実績があり、患者の受け入れも円滑に行われている。

九州で地域の産婦人科などで取り上げた新生児に先天性心疾患が確認された場合、宮崎大医学部付属病院をはじめとする各県内の連携施設に相談。これらの病院が手術が必要と判断すれば、福岡市立こども病院へドクターヘリなどで搬送する。術後、病態が落ち着けば連携施設へと患者を戻し、経過を見守る。

医師不足などの背景から、難易度の高い手術の集約化は小児に限らず、心臓外科全体の課題となっている。昨年、日本小児循環器学会と日本心臓血管外科学会、日本胸部外科学会が合同で「安全で良質な先天性心疾患の外科医療を継続的に提供し、次世代医療者を育成するため、拠点施設を中核とした拠点化を学会が推進する」とする提言を発表。小児の心疾患手術は成人と比べて種類が多く経験を蓄積しにくいという特徴があり、まずは小児に絞って集約化を進めることにした。

がん医療では、地域間格差を是正するため、国の制度として「がん診療連携拠点病院」が指定されているが、今回は学会独自の取り組み。今後、各エリアで拠点病院の病床を増やしたり、ドクターヘリなどで緊急搬送を行う体制を整えたりする対応が必要となる。

福岡市立こども病院心臓血管外科長の中野俊秀医師は「地域拠点化を進めることにより、人材を集中させ良質な医療チームを組むことができる。医師の働き方改革にもつながる」と話した。

 

産院から長崎大、そして福岡へ

適切な病院間連携によって救われた命がある。

長崎市の佐藤皓信(こうしん)ちゃん(2)は令和3年9月の朝、自宅近くの産院で産声を上げた。皮膚や粘膜が青紫色に変化するチアノーゼがあり、両親は「念のため長崎の大学病院へ搬送する」と告げられた。母、律子さん(32)は「何が起こったのか、感情がついていかなかった」と振り返る。

長崎大医学部付属病院に搬送後、肺静脈閉塞を伴う総肺静脈還流異常症に加え、大動脈縮窄(しゅくさく)症を合併している重症の先天性心疾患と診断された。救命が非常に困難で、緊急手術が必要だが、九州ではこの高難易度の手術ができる病院は福岡市立こども病院以外になかった。

連携体制があったことですぐに手術の段取りが整い、ドクターヘリで搬送。出産の8時間後、福岡で手術が始まった。

付き添った父、皓一さん(42)は「産院から長崎、長崎から福岡への連絡のどれかが少しでも遅れていたら手術開始が遅れ、危なかった」とわが子をいとおしそうに見つめた。親族の医療従事者には「命が助かったのは奇跡」と言われたという。

生まれた直後に福岡市立こども病院で緊急手術を受けた佐藤皓信ちゃん。後遺症もなく、元気に成長している

皓信ちゃんは元気に成長し、現在も定期検診はあるが、後遺症もなく日常生活を送る。「両院で迅速にやりとりしていただけたのは本当にありがたい」と皓一さん。「長崎で高度医療が受けられるのが理想だが、難しいこともわかる。患者が安心できる連携体制を全国で構築してほしい」と話した。

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